トリッキング練習帳
トリッキングの技と練習法を難易度別にまとめました
トリッキングは、武道の蹴り・体操の宙返り・ブレイクダンスの動きを組み合わせて「技をつなげて魅せる」スポーツです。基礎の蹴り技から上級の多回転技までを帯の色で5段階に分け、練習のポイントをまとめました。
各技には、YouTubeで公開されている解説動画の中から、わかりやすいと感じたものを選んで紹介させていただいています。動画はいずれも各制作者の方の作品で、ACST-BJが制作したものではありません。
また、技の難易度の分け方は、プロトリッカーの Sam Kojo Plummer さんが運営する Kojo's Trick Lab(会員制の動画ライブラリ)の分類を参考にさせていただきました。
覚えておきたい用語
トリッキングの用語は英語由来のカタカナがほとんどで、技名もこれらの組み合わせでできています。基本は最初に覚えたい用語、発展は技が増えてきたら覚えたい用語です。
技名の読み方
- 技名の組み立て 基本
- 「踏み切り方+技本体(回転量)+変化+着地」の順に並べて呼びます。例:チート720フック(チートで踏み切り、720回ってフック)、コーク・ハイパー(コークをハイパーで着地)。
- 回転量 360 / 540 / 720 / 900 基本
- トルネード=360°、540キック=540°のように、一般的には踏み込みの回転も含めた合計で名前が付きます。チート720はステップ180°+空中540°です。数字は呼び名としての目安で、実際の空中での回転量とは一致しないことも多くあります。
- ダブル・トリプル・クアッド DOUBLE / TRIPLE / QUAD 基本
- ひねりや回転が2回・3回・4回であることを表します。例:ダブルコーク、トリプルフル、クアッドコーク。会話では略すこともあり、カートダブルフルを「カーダブ」と呼んだりします。
- コンボ COMBO 基本
- 複数の技を止まらずに続けてつなげたもの。技と技の間のつなぎ方(トランジション)がコンボの質を左右します。
向きと脚の呼び方
- インサイド/アウトサイドの脚 INSIDE / OUTSIDE LEG 基本
- 回転の向きで決まる脚の呼び方です。左回りなら右脚がインサイド、左脚がアウトサイド。右回りならその逆になります。着地や蹴りの説明で頻繁に出てきます。
- 進行方向 DOM 発展
- Direction of Movement の略で、コンボの中で移動していく方向のこと。着地の向きはこの方向を基準に表します。
- フロントサイド/バックサイド FRONTSIDE / BACKSIDE 発展
- 進行方向に体の前を向けた向きがフロントサイド、背中を向けた向きがバックサイドです。
踏み切り方(セットアップ)
- セットアップ SETUP 基本
- 技に入るための踏み切り方や助走の動きのこと。単に「セット」とも言います。
- チート CHEAT 基本
- 技の前に180°振り返るステップ。進行方向に背を向けるように踏み込んでから跳ぶので回転の勢いを稼げ、トルネードや720・900系の土台になります。また、縦に回る技で体の軸を真縦から抜いて(傾けて)回ることも「チート」と言います。
- ポップ POP 基本
- 両足で同時に踏み切ること。単体の技名ではポップ360のように両足踏み切りを表し、コンボの中では片足ずつ着地してから両足で踏み切るつなぎを指します。
- スウィングキック SWING KICK 発展
- スウィングスルー(下の「つなぎ方」を参照)の脚の振りをそのまま踏み切りに使う蹴り。スウィング360など。
- スクート SCOOT 基本
- 片膝をつくほど低く構えて片手を床につき、後ろ足で踏み切って180°向きを変えるセット。ゲイナー系やコークの入りに使います。
- Jステップ J-STEP 発展
- 左右交互のステップからスウィングに入るセット。コークなど後ろ向きの技の助走に使います。
- セットに使う技 CART / TDR 発展
- 側転(カート)やタッチダウンライズ(TDR)は、それ自体が技であると同時に、次の大技の勢いを作るセットとしても使われます。
着地の形(ランディング)
- コンプリート COMPLETE 基本
- アウトサイドの脚で、ほぼ背中を進行方向に向けて着地する形。多くの技の標準的な着地で、必要な回転量がいちばん少なく済みます。
- ハイパー HYPER 基本
- インサイドの脚で着地する形。コンプリートより回転が多く必要です。古い使い方では「蹴った脚で着地する」意味もあり、540キックを「トルネード・ハイパー」と呼ぶことがあります。
- メガ MEGA 発展
- アウトサイドの脚で、体の前を進行方向に向けて着地する形。ここからフロントスウィングで次の技につなげられます。
- セミ SEMI 発展
- インサイドの脚で、体の前を進行方向に向けて着地する形。メガと同じくフロントスウィングにつなげられます。
- ターボ TURBO 発展
- 蹴り技を両足で着地すること。ポップ360をターボで着地する、のように使います。
つなぎ方(トランジション)
- トランジション TRANSITION 基本
- ある技の着地から次の技の踏み切りへの「つなぎ方」。コンボの要になります。
- スウィングスルー(スウィング) SWINGTHROUGH 基本
- 片足で着地し、浮いている脚を床につけずに軸足の横を振り抜いて、着地した足で次の技を踏み切るつなぎ。前に振るフロントスウィングと後ろに振るバックスウィングがあり、コークはバックスウィングから入ります。
- パンチ PUNCH 基本
- 両足で着地し、衝撃を吸収して止まらずに、すぐ両足で踏み切るつなぎ。
- バニッシュ VANISH 基本
- 片足ずつ着地し、着地したのと同じ順番で片足ずつ踏み切るつなぎ。バニッシュ900など技名にも使われます。
- リバーサル REVERSAL 発展
- 片足ずつ着地し、着地と逆の順番で片足ずつ踏み切るつなぎ。
- リダイレクト REDIRECT 発展
- 片足ずつ着地したあと、向きを整える一歩を挟んでから踏み切るつなぎ。
- スキップ SKIP 発展
- バニッシュの間に小さな跳ねを入れ、両足が同時に床につかないようにしたつなぎ。
- ミスレッグ MISSLEG 発展
- 浮いている脚を、着地するかのように床へ向けて振り下ろし、床につけずに次の踏み切りへつなげる動き。
- ラップ(ラップスルー) WRAP 発展
- アウトサイドの脚を軸足の後ろへ巻き込むように振り、内回りの技に入るつなぎ。スウィングスルーの一種です。
技の系統と回り方
- 縦軸の蹴り VERTICAL KICK 基本
- 体を立てたまま縦の軸で回る蹴り技。トルネード、540、チート720などで、「踏み切り方+回転量+最後の蹴り」で名前が付きます。
- 水平軸の技 HORIZONTAL 発展
- 体を水平に倒して回る技。バタフライキックがその代表です。
- 宙返り系 INVERTED 基本
- 腰が頭より上を通る技。バック宙やフルのように真っ直ぐな軸で回るもの(オンアクシス)と、コークのように斜めの軸で回るもの(オフアクシス)があります。
- バック宙とゲイナー BACKFLIP / GAINER 基本
- 同じ後ろ向きの宙返りでも、両足で踏み切るのがバック宙やフル、片足で踏み切るのがゲイナーやコークです。
- インバージョン INVERSION 発展
- 宙返り系の技で、体がどれだけ逆さになるかの度合い。同じ技でもインバージョンが変わると見た目も難しさも変わります。
変化形(バリエーション)
- バリエーション VARIATION 基本
- 元になる技に、蹴りや脚の形などの変化を加えたもの。例:フルに回し蹴りを加える、Bツイストに蹴りを加える。
- ラウンド ROUND 基本
- インサイドの脚で蹴る回し蹴り系の蹴り。Bツイスト・ラウンド、コーク・ラウンドなど。
- フック/ハイパーフック HOOK / HYPERHOOK 基本
- アウトサイドの脚で蹴るフック系の蹴り。ハイパーで着地することが多い蹴りです。
- スイッチ SWITCH 基本
- 空中で一方の脚がもう一方の脚を追い越し、その脚で着地すること。ゲイナースイッチなど。
- スワイプ SWIPE 発展
- ラウンドを蹴り、その蹴った脚でハイパー着地する変化。
- シュリケン SHURIKEN 発展
- 外回しの三日月蹴り(アウトサイドクレセント)を蹴り、その蹴った脚で着地する変化。
- ナイフ JACKKNIFE / SWIPEKNIFE 発展
- インサイドの脚で蹴った直後に、アウトサイドの脚でハイパーフックを蹴る変化。縦軸の蹴りではジャックナイフ、オフアクシスの技ではスワイプナイフと呼びます。
- ダブルレッグ(パイク) DOUBLELEG / PIKE 発展
- 両脚をそろえたまま、車のワイパーのように下半身を振る形。カポエイラに由来します。
- シザー SCISSOR 発展
- 宙返りで蹴りと反対方向へ回りながら、はさみのように脚を入れ替えて蹴る変化。
練習でよく使う言葉
- スポッティング SPOTTING 基本
- 回転中に目線で着地点などの目印をとらえること。体操などでは、補助者が体を支える「補助」の意味でも使われます。
- バトル BATTLE 発展
- 選手が交互に技やコンボを見せ合う、トリッキングの大会形式。
用語の定義は Loopkicks Tricking の Tricktionary などを参考にさせていただきました。トリッキングの用語は地域やコミュニティによって呼び方や意味が少しずつ違うことがあります。
トリッキングはACST-BJでも習えます
トリッキングが得意分野のくらと先生が在籍しています。レッスンは個人指導が基本なので、自分のレベルに合った技から、クッション性のある専用スタジオで安全に練習できます。実際の動きを見ながら、踏み切りや回転のクセを一緒に確認していけます。
体験レッスンを予約する トリッキングを習いたい・講師について聞きたいなどのご相談はお問い合わせからどうぞ。トレーニング法
技の習得は「柔軟性」「跳躍力」「技練(反復)」の3本柱で進みます。どれか1つだけが伸びても技は安定しません。項目の分け方は、Kojo's Trick Lab のトレーニング関連のカテゴリを参考にさせていただきました。
始め方
練習の組み立て(1回約90分の例)
| パート | 時間 | 内容 | ねらい |
|---|---|---|---|
| ウォームアップ | 10分 | ジョグ、股関節回し、脚振り(前・横・後)、軽いジャンプ | 体温を上げ、関節の可動域を開く |
| 基礎 | 15分 | 回し蹴り・フック・側転・ポップ360を左右各10本 | 基礎蹴りの精度と回転感覚 |
| 新しい技 | 25分 | 取り組み中の技を分解ドリル→通しで5本×数セット | 疲れる前に新しい動きを覚える |
| コンボ | 15分 | できる技を2〜3個つなげる(例:540→スウィングスルー→コーク) | つなぎの技術と持久力 |
| 跳躍力 | 10分 | スクワットジャンプ、タックジャンプ、ランジジャンプ | 瞬発力(プライオメトリクス) |
| クールダウン | 15分 | 開脚・前後開脚・腸腰筋などの静的ストレッチ | 柔軟性の向上と回復 |
ウォームアップと可動域
跳躍力
技を磨く
怪我の予防と恐怖心
- 技練は体が元気なうちに新しい技は練習の前半に。疲れてフォームが崩れてきたら、その日の新技は終わりにします。
- 環境を選ぶフリップ系はマット・トランポリン・芝生から。硬い床で初めての宙返りはしません。
- 分解して覚えるセット→踏み切り→空中→着地を個別に練習し、最後につなげます。動画はスロー再生で確認すると効果的です。
- 撮影して比較する自分の動きをスマホで撮り、手本と同じ角度で見比べると修正点がはっきりします。
- 反対側も触っておく得意な回転方向に偏りすぎると体のバランスを崩しやすいので、基礎蹴りは左右とも練習します。
- 着地を最優先に回転不足のまま無理に着地しようとすると膝・足首を痛めます。足をひねりそうなら転がって逃げます。
技のつながり
矢印は「先に覚えておくと習得しやすい技」を表します。キック系(上)、ツイスト系(中)、フリップ系(下)の3系統に分かれています。左端の色は難易度の帯です。
掲載している動画は、YouTubeで公開されている各チャンネルの動画を埋め込みで紹介させていただいているもので、ACST-BJの講師によるものではありません。わかりやすい解説を公開してくださっている制作者の皆さまに感謝いたします。アクロバット技には怪我のリスクがあります。フリップ系は指導者のいる環境やマットのある場所で練習してください。「できた」のチェックはお使いのブラウザ内にだけ保存されます。